7-31<九段の丘>

                                                ワインを飲むと
 箱舟を出たノアは農業をはじめる。以前はノアは農機具製造で忙しかった。その技術で、彼は箱舟を造ることができた。しかし洪水後は、製品を売ろうにも、自分たち一家だけしか人間がいないからビジネスは成立しない。そこで自ら土地を開墾し畑をつくった。ノアはとりわけブドウが好きであった。
 ユダヤの伝説では、ノアがブドウ畑で働いているとサタンがやってきた。
「ノアさん、何をつくっているんですか」
「ブドウをつくっているんだよ。いずれ美味しいワインを飲もうと思ってね」
「じゃ、わたしも手伝いますから、仲間に加えてください」
 ところが、ある夜、サタンはそのブドウ畑にこっそりやって来て、まず羊を殺し、羊の血を畑の中に混ぜた。次にライオンを殺して、ライオンの血を畑に混ぜた。その次に猿を殺して、猿の血を畑に混ぜた。最後に豚を殺して、その血を畑に混ぜた。
 やがてブドウは収穫され、おいしいワインができた。
 ノアはワインを飲んだ。最初は気持ちよく、羊のようにおとなしかった。だんだん酔いがまわってくると、今度はライオンのように居丈高になって大声で吼えはじめた。そのうち、さらに愉快になって猿のように踊りはじめたが、最後には酔いつぶれて、豚のようにうずくまって寝込んでしまった。
 これ以来、ノアに限らず、ワインを飲むとだれでもこういうことを経験するようになった

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