3-12<九段の丘>

    ワインを飲むと
 箱舟を出たノアは農業をはじめる。以前、彼は農機具製造で忙しかった。その技術で箱舟をつくることができた。納得!ところが洪水後、製品を売ろうにも自分たち一家だけしか人間がいないからビジネスが成り立たない。そこで、自ら土地を開墾し畑を作った。ノアはとりわけ葡萄が好きだった。
 ユダヤの伝説では、ノアが葡萄畑を作っているとサタンがやってきた。 「ノアさん、何を作っているんですか」
 「葡萄畑をつくっているんだよ。いずれ美味しいワインを飲もうと思ってね」
 「じゃあ、わたしも手伝いますから、仲間に加えてください」
 ところが、ある夜、サタンはその葡萄畑にこっそりやって来て、まず羊を殺し、羊の血を畑の中に混ぜた。次にライオンを殺して、ライオンの血を畑に混ぜた。その次に猿を殺して、猿の血を混ぜ、最後に豚を殺して、豚の血を畑に混ぜた。
 やがて
    葡萄は収穫され、美味しいワインができた。
 ノアはワインを飲んだ。最初は気持ちよく、羊のようにオトナシカッタ。だんだん酔いが回ってくると、今度はライオンのように居丈高になって大声で吠えはじめた。そのうち、さらに愉快になって猿のように踊り始めた。最後には酔いつぶれて、豚のようにうずくまって寝込んでしまった。
 これ以来、ノアに限らず、ワインを飲むとだれでもこういうことを経験するようになった。

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